データインデックス株式会社

情報医療ナレッジ

指定濫用防止医薬品を「OTC統合DB」でご確認いただけます

詳細はこちら

2026年薬機法改正で新設される「指定濫用防止医薬品」

2026年5月施行の改正薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)により、「指定濫用防止医薬品」が新設されます。
本記事では、従来の枠組みを抜本的に強化した制度の内容と、医療従事者が果たすべき役割について解説します。

新制度の背景「オーバードーズ問題」

近年、医薬品を本来の治療目的から逸脱して大量に摂取する「オーバードーズ(薬物過剰摂取)」が深刻な社会問題となっています。かつて濫用の主流であった覚醒剤等の違法薬物とは異なり、現在はドラッグストア等で容易に購入可能な「一般用医薬品(OTC医薬品)」による事例が急増している点が特徴です。
オーバードーズが急速に社会問題化した背景には、SNSを介した情報の拡散が強く影響しています。インターネット上のコミュニティでは、特定の市販薬による高揚感や多幸感、あるいは「嫌なことを忘れられる」といった体験談が共有され、それが若年層にとって安易なストレス解消手段として誤認される傾向にあります。また、コロナ禍以降の対人関係の希薄化により、身近な薬物へ逃避するハードルが下がったことも要因の一つと考えられています。

従来の「濫用等のおそれのある医薬品」の問題点

これまでの規制では、薬剤師又は登録販売者による確認事項は「努力義務」に近い側面があり、以下のような課題が浮き彫りとなっていました。

・販売対象者の制限:購入理由や氏名・年齢の確認が主に口頭で行われ、虚偽の申告を完全に見抜くことが困難

・数量の制限:原則「1人1包装単位」に対し、広域で行われる複数店舗での購入(買いはしご)を防ぐ物理的な限界

・陳列環境:抑止力の維持が個々の現場判断に依存し、店舗形態によっては購入者が手に取りやすい配置にせざるを得ないケースも

「指定濫用防止医薬品」で厳格化されるルール

2026年5月1日施行の改正薬機法により、「濫用等のおそれのある医薬品」は「指定濫用防止医薬品」という新たな法的区分へと格上げされます。ルールの順守は「義務」へと強化され、違反した場合は行政処分の対象となります。
主な変更点とルールは下記の通りです。

・対象成分の拡大:新たに2成分を指定、計8成分へ
   エフェドリン
   コデイン
   ジヒドロコデイン
   ブロモバレリル尿素
   プソイドエフェドリン
   メチルエフェドリン
(新)デキストロメトルファン
(新)ジフェンヒドラミン

・年齢制限:18歳未満の若年者への大容量製品、複数個の販売は原則禁止

・陳列方法の義務:購入者が直接手に取れない鍵付き陳列棚への保管、カウンター内への配置、あるいは店頭には空箱のみを陳列(ただし、情報を提供するための設備から7メートル以内の範囲に陳列し、当該設備にその薬局又は店舗において薬事に関する実務に従事する薬剤師又は登録販売者を継続的に配置する場合はその限りではない)

・確認と記録の義務:購入者の氏名、年齢(身分証等の提示)、他店での購入状況を口頭で確認し、これらの手順や根拠(確認記録)を店舗側で作成し、適切に保管

→ データインデックスが提供する医薬品データベース「Xlib」の詳細はこちら

医療従事者が果たすべき役割

オーバードーズは、特に10代から20代の若年層において、家庭や学校での孤立・将来への不安といった「生きづらさ」を背景に、深刻な薬物依存への入口として広がっており、規制への対応に留まらず、メンタルヘルスを含めた社会全体での包括的な支援が急務となっています。
薬剤師や登録販売者は、制度と利用者をつなぐ現場の担い手として、不適切な購入を防ぐ最後の砦です。2026年5月以降は、「法律による義務化」を根拠として、より毅然とした態度で購入状況の確認を行うことが可能になります。しかし、ただ販売を拒否するだけでは、購入者は他店へ、あるいはより危険な薬物へ移行するリスクがあります。現場では、相談者の悩みに傾聴し、精神保健福祉センターや依存症相談拠点機関などの専門機関を紹介するなど、医療・福祉が連携した「つなぐ支援」の実践が求められています。

―参考資料―
厚生労働省 一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について (薬剤師、登録販売者の方へ)
厚生労働省 一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について
厚生労働省 指定濫用防止医薬品の指定について
2025年12月26日 医薬発1226第17号 「指定濫用防止医薬品の販売等について」