新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月初旬に第1例目が確認されて以降、数ヵ月で世界的に流行しました。現在、パンデミックの収束を目指し、世界中で治療薬やワクチンの研究開発が進められています。
今回は2022年10月31日時点で、国内で承認され、流通したワクチンおよび開発中のワクチンについて、種類や用法、取扱い上の注意点等をご紹介します。
ワクチンの基礎
免疫のしくみ
免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」があります。
自然免疫とは、人間が元来もっている異物に対する防御機構で、白血球などが関与します。体内に侵入した異物全般にはたらくため、過去に感染したことがない病原体にも迅速に反応をしてくれる免疫システムです。
それに対して、獲得免疫は、体内に侵入した病原体の抗原を記憶し、病原体を排除する免疫システムです。病原体それぞれの抗原に対して反応するしくみのため、一度体内に入ったことのある病原体に対しては自然免疫より迅速に病原体を排除することができます。抗体を作り病原体を攻撃する「液性免疫」及び感染した細胞ごと病原体を破壊する「細胞性免疫」があります。
ワクチンについて
ワクチンは獲得免疫のしくみを利用し、感染、発症、重篤化を予防する医薬品です。
各ワクチンの種類と特徴について、次の表にまとめました。
新型コロナウイルスワクチンの各社比較
新型コロナウイルスワクチンの種類
2022年10月31日現在、日本で承認されている新型コロナウイルスワクチンは8種類あり、また臨床試験の進捗などから有意性が顕著な国内開発中のワクチンが2種類あります。
塩野義製薬社は組換えタンパクワクチンを臨床試験中で、国産ワクチンの早期提供を目指しています。さらに、塩野義製薬社は他の投与経路の開発研究も進めています。また、KMバイオロジクス社は新型コロナウイルスワクチンの中では新たなタイプである不活化ワクチンを開発中です。
アストラゼネカ社のバキスゼブリア筋注は、2022年9月30日をもって、接種終了となりました。
新型コロナウイルスワクチンの用法用量について
承認されている接種対象者と接種回数は各ワクチンによって異なります。
米ジョンソン・エンド・ジョンソン/ヤンセンファーマ社のジェコビデン筋注は他のワクチンと異なり、1回の接種で十分な免疫を獲得できると発表されています。
各ワクチンで1回の接種量および、1バイアルの容量に違いがあるため、1バイアル当たりの接種可能な回数が異なる点には注意が必要です。
また、モデルナ社のスパイクバックス筋注は初回免疫と追加免疫、1価と2価で接種量が変わります。
→ 医薬品の用法・用量を扱うデータベース「用法・用量DB」はこちら
新型コロナウイルスワクチンの取扱い上の注意点
ワクチンの種類によって取り扱い方法が異なり、mRNAワクチンは非常に不安定であるため冷凍状態を維持する必要がありますが、その他の種類のワクチンでは冷蔵保存が可能です。
また、同じmRNAワクチンでも、ファイザー社のコミナティ筋注では超冷凍状態(-50℃以下)で配送されるのに対して、モデルナ社のスパイクバックス筋注では-50℃以下での保管が禁止されており、ドライアイスの上に直接置かないように注意が記載されています。ワクチンの荷受け段階から接種直前までのタイミングによっても、保存温度と有効期間にそれぞれ違いがありますので、取り扱う際には各ワクチンの違いを確認し、十分に注意する必要があります。
今回の各社比較について全てまとめた資料をご用意しましたので、ご活用ください。
(2022年10月31日時点の情報であり、今後情報が変更・更新されることがありますので、常に最新の情報をご参照ください。)
次回は新型コロナウイルスワクチンの有効性や副反応についてご紹介します。
新型コロナウイルス関連医薬品の各種情報を「薬の検索」からご確認いただけます
―参考資料―
厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/
コミナティ筋注(1価:起源株) 添付文書(2022年10月改訂:第19版)
スパイクバックス筋注(1価:起源株) 添付文書(2022年10月改訂:第16版)
バキスゼブリア筋注 添付文書(2022年8月改訂:第6版)
コミナティ筋注5~11歳用 添付文書(2022年9月改訂:第5版)
ヌバキソビッド筋注 添付文書(2022年10月改訂:第6版)
ジェコビデン筋注 添付文書(2022年6月作成:第1版)
コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1) 添付文書(2022年10月改訂:第2版)
スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1) 添付文書(2022年10月改訂:第2版)
コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) 添付文書(2022年10月改訂:第2版)
コミナティ筋注6ヵ月~4歳用 添付文書(2022年10月作成:第1版)
米ジョンソン・エンド・ジョンソン/ヤンセンファーマ社 プレスリリース(2021/05/24時点)
https://www.janssen.com/japan/press-release/20210524
米ジョンソン・エンド・ジョンソン/ヤンセンファーマ社 プレスリリース(2021/02/01時点)
https://www.janssen.com/japan/press-release/20210201
塩野義製薬社 プレスリリース(2021/10/21時点)
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2021/10/211021.html
KMバイオロジクス社 プレスリリース(2021/03/22時点)
https://www.kmbiologics.com/corporate/news/2021/pdf/20210322_01.pdf