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【令和8年度診療報酬改定】バイオ後続品普及に向けた目標と評価体系

令和8年度(2026年度)の診療報酬改定では、バイオ後続品(バイオシミラー:BS)を取り巻く環境がより厳格かつ具体的な実績評価へと大きく舵を切りました。バイオ医薬品は今やがんや自己免疫疾患などの治療において欠かせない存在となっている一方、高額な薬剤料が医療財政を圧迫している側面もあります。
政府が掲げる「2029年度末までに、バイオシミラーが80%以上を占める成分数を全体の成分数の60%以上とする」という目標達成に向け、今回の改定では「加算の新設」や「目標の具体化」により、現場での切り替えを強力に後押ししています。本記事では、医療現場やシステム管理にどのような影響を与えるのかを解説します。

2029年度までの「新数値目標」の設定

今回の改定の背景には、政府が新たに掲げたバイオ後続品(BS)の普及目標があります。この新目標は、従来の「全体での数量シェア」を追う形から、「成分ごとの普及の質」を重視する形へと大きくシフトしました。

新目標:2029年度末までに、BSの調剤割合(置換率)が80%以上となる成分数を、全BS対象成分数の60%以上にする。

従来の、すべてのバイオ医薬品を合算した「数量シェア」を重視する方式では、普及しやすい特定の薬(インスリン製剤など)だけで数字を稼げてしまい、高度な説明や慎重な判断が求められる「抗がん剤」や「抗体医薬」などの高額薬剤が、先発品のまま放置される懸念がありました。
今回の「成分数ベース」への目標導入により、今後は、特定の薬剤や治療領域に偏ることなく、「扱うすべてのBS対象成分において、満遍なく8割以上の切り替えを目指す」という、幅広い領域での取り組みが不可欠となります。

調剤報酬の新設:「バイオ後続品調剤体制加算(50点)」について

令和8年度診療報酬改定では、薬局向けに従来のジェネリック(GE)の評価(後発品調剤体制加算)から独立した、「バイオ後続品調剤体制加算(50点)」が新設されました。
特筆すべきは、その実績要件の厳しさです。単に在庫を置くだけではなく、地方厚生局への「届出添付書類(様式87の3の7)」に記載されている、非常に高い施設基準を満たす必要があり、薬局全体として「BS選択を標準」とする体制を構築できているかが問われています。
また、実務上の注意点として、インスリン製剤は「バイオ後続品調剤体制加算(50点)」の対象外とされるルールがあるため、薬局の現場やシステム管理においては、システム側で「インスリンフラグ」を独立して保持するなど、複雑な除外計算を自動化できるようなデータ管理が有効となります。

バイオ後続品調剤体制加算に係る届出添付書類の記載例。バイオ医薬品成分ごとにバイオ後続品調剤数量、バイオ先行品調剤数量、調剤割合を記入する表。

届出添付書類では、バイオ医薬品成分ごとに「バイオ後続品調剤数量」と「バイオ先行品調剤数量」を集計し、バイオ後続品調剤割合が80%以上となる成分数を確認する形式となっています。

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医療機関側の変革:入院・外来における評価の見直し

薬局だけでなく、病院やクリニックといった「処方・投与する側」の医療機関に対しても、BSの使用実績を直接評価する体系へと厳格化されました。
入院医療において、病院全体でのBS採用・使用実績を評価する「バイオ後続品使用体制加算」の要件が、従来の「全合算での数量」による評価から、国の新目標に足並みを揃える形で「成分ごとの達成度」を意識した評価へとシフトしています。
同時に、医学的妥当性と経済性を考慮して院内での標準薬を決定する「フォーミュラリー」のガイドラインにおいて、BSを第一選択(推奨薬)として組み込むことがこれまで以上に強く求められるようになると考えられます。一部の診療科だけでなく、病院全体で足並みを揃えた採用薬の見直しが必要となります。

一般名処方加算におけるバイオ医薬品の評価対象化と患者さんへの指導評価

処方の段階から薬局での調剤、服薬指導に至るまで、バイオ後続品(BS)を選択・推進しやすくするための仕組みが導入・強化されました。

・一般名処方加算におけるバイオ医薬品の評価対象化
特定の銘柄ではなく「成分名」で記載する一般名処方について、バイオ後続品のあるバイオ医薬品を一般名処方した場合も、一般名処方加算の評価対象となりました。これにより、処方段階でも、バイオ後続品を選択しやすくする仕組みが強化されています。また、薬局側での銘柄選択が非常に柔軟になり、これまでBS普及の大きな壁となっていた処方段階での制約が緩和されました。

・特定薬剤管理指導加算3「ロ」の算定要件の見直し
患者さんが医薬品を選択する際の重要な説明を評価する「特定薬剤管理指導加算3のロ」の算定要件に、バイオ後続品に関する説明が新たに追加され、バイオ医薬品が一般名処方または銘柄名処方された患者さんに対し、品質や有効性、安全性等について適切な情報提供を行った場合、処方箋受付1回につき算定が可能となります。
なお「バイオ後続品調剤体制加算」ではインスリン製剤が除外されるルールですが、「特定薬剤管理指導加算3のロ」においてはインスリン製剤も算定対象となります。

まとめ

令和8年度改定では、特定の薬剤に偏ることなく、施設で扱うすべてのBS対象成分において満遍なく高い置換率を維持する体制が、病院・薬局双方の評価を左右します。

新設された各種加算のシミュレーションはもちろん、システム側におけるインスリン等の除外品目マスタの正確な制御、さらには高額薬剤における患者説明の標準化など、本改定を機に今一度実務フローの再点検を行うことが医療現場やシステム管理の双方に求められます。

―参考資料―
厚生労働省 「令和8年度診療報酬改定について」(答申資料、個別改定項目について)
厚生労働省 「バイオ後続品の普及促進に向けた取組方針について」
厚生労働省 「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」(2024年9月策定)