データインデックス株式会社

情報医療ナレッジ

糖尿病薬の分類情報を判別するデータベースを取り扱っております。

詳細はこちら

GLP-1受容体作動薬と適応外使用の危険性

糖尿病は、何らかの原因により血液中の糖分が正常より多くなってしまう疾患です。糖尿病のうち約90%を占める2型糖尿病は、血液中の糖分を細胞に運びエネルギーとして使われるようにする役割を持つインスリンというホルモンが十分に生成されないこと(インスリン分泌能の低下)や、体のインスリンに対しての感受性の低下(インスリン抵抗性)に、過食や運動不足、ストレスなどの生活習慣が加わり起こるとされています。
糖尿病は最初のうちはほとんど症状が現れませんが、進行すると頻尿や喉の渇き、疲れやすさ、視力の低下、頻繁な感染症などが現れ、適切な治療が行われない場合は、心臓病、腎臓病、失明などの合併症を引き起こす恐れがあります。
2型糖尿病の治療は、基本的に食事療法と運動療法から開始され、これらを十分に行ったうえで効果が不十分な場合には、血糖値をコントロールするための医薬品が使用されます。そのひとつがGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬です。

GLP-1受容体作動薬の作用機序

GLP-1受容体作動薬は、体内で自然に分泌されるGLP-1というホルモンと同じように働きます。GLP-1は、食事後に血糖値が上昇すると膵臓から分泌され、インスリンの分泌を促し、一方でグルカゴン(血糖値を上昇させるホルモン)の分泌を抑える働きがあります。さらに、胃から腸への食物の移動を遅らせ、食後の血糖値の上昇を緩和します。また、GLP-1は脳の食欲をコントロールする部分に作用し、満腹感を引き起こすことで食欲を抑制します。
GLP-1受容体作動薬はGLP-1と同じようにGLP-1受容体を活性化させインスリン分泌を促すことで、血糖値を下げる効果があります。また、その食欲を抑制する作用などにより、GLP-1受容体作動薬の使用は結果として体重の減少につながると考えられます。

GLP-1受容体作動薬のダイエット目的での使用

GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病の治療を目的として使用されてきましたが、その食欲抑制効果や体重減少効果により、ダイエット目的での使用に関心が集まってきました。
最近では2023年11月、肥満症治療薬として持続性GLP-1受容体作動薬であるウゴービ皮下注(一般名:セマグルチド)が薬価収載されましたが、その使用は、肥満症であり高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、BMIが35を上回っているか、BMIが27を超えると同時に2つ以上の肥満関連の健康障害を有する場合に限られており、厳しく制限されています。

ウゴービ皮下注の添付文書より抜粋
肥満症治療薬「ウゴービ皮下注」の添付文書には対象となる患者の条件が記載されている

→ データインデックスが提供する医薬品データベース「DIR」の詳細はこちら

一方でこの数年、一部のクリニックが美容治療をうたい、自由診療のもとダイエット目的で2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬を安易に適応外処方し、使用させるケースがみられており、それらの行為については2020年に国民生活センターが注意を呼びかけています。これらのGLP-1受容体作動薬は本来、2型糖尿病の診断を受けた患者に対してのみ使用すべきもので、その診断を受けていない日本人に対してのダイエット目的での使用は、国内では承認されていません。

GLP-1受容体作動薬の適応外使用のリスク

以下に、2型糖尿病に用いるGLP-1受容体作動薬を適応外のダイエット目的で使用する場合の危険性を2つの観点から紹介します。

  • 副作用など、医学的に適切な管理の欠如

糖尿病治療薬の多くは血糖値を下げる作用を持ちます。健康な人がこれらの薬を使用した場合、血糖値が過度に低下し、脱力感、動悸、頭痛、吐き気などの低血糖症状があらわれ、場合によっては失神や昏睡状態につながる恐れがあります。高所での作業や自動車の運転等を行う場合は低血糖症状による事故を引き起こす危険性もあります。

本来、GLP-1受容体作動薬は定期的な受診を行い医師の監督下で使用すべきものです。これらの薬を自己判断で安易に使用することには、上に挙げた低血糖症状のみならず、副作用等の有害事象が適切に管理されないリスクがあると言えるでしょう。GLP-1受容体作動薬の使用は、たとえば膵炎にかかったことがある人や重度の胃腸障害がある人など、特定の背景を持った人には特に注意が必要であり、不適切な使用によってその危険性は高まります。

  • 不正確な自己診断のリスク

適切な食事と適度な運動は、健康的な体重の維持・管理にとって重要な要素であり、それらを無視して薬物に頼ることは、最終的には健康を損なう可能性があります。自己判断で糖尿病薬を使用して肥満や過体重を「解決」しようとすると、本当の健康問題が見過ごされ、その結果、治療が遅れる恐れがあります。

また、ダイエット目的で糖尿病治療薬を使用し、体重管理が薬物頼みになることは、精神的な薬への依存へとつながるかもしれません。 美容やダイエットを期待するあまりGLP-1受容体作動薬を自己判断で使用することは、長期的には健康を害する多くのリスクを背負うことになります。適応外のダイエット目的での薬の使用に安易に頼らないように注意しましょう。

―参考資料―
独立行政法人国民生活センター 自宅で完結?手軽に痩せられる?痩身をうたうオンライン美容医療にご注意!(https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20200903_1.pdf
日本医師会 糖尿病治療薬等の適応外使用について(https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20231025_4.pdf
ウゴービ皮下注 添付文書(2023年11月改訂:第2版)