※本記事は2014年に掲載した内容を最新情報に更新したものです。
今回は、毎年流行するインフルエンザ感染症を話題として採り上げ、インフルエンザの診断や薬の効く仕組みについて説明します。
インフルエンザとは
毎年、冬が近づくとインフルエンザの流行が話題になります。インフルエンザの症状は風邪によく似ているため、風邪と何が違うの?と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
風邪は、ある種のウイルスや細菌が鼻やのどに付着して発症する様々な症状(のどの痛み、鼻汁、咳、熱など)をひとくくりに「風邪」と呼んでいます。一方、インフルエンザは「インフルエンザウイルス」というウイルスに感染することによって起こる病気です。
インフルエンザでは、高熱(38℃以上)、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が比較的急速に現れるのが特徴です。また、小児ではまれに急性脳症を起こすことがあり、高齢者など免疫力が低下している人の場合は肺炎を起こすことがあるため、注意が必要です。
インフルエンザの種類
インフルエンザには、毎年流行する季節性インフルエンザのほか、新型インフルエンザや鳥インフルエンザなどがあります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか?
インフルエンザウイルスはA型、B型、C型、D型の4種類に大きく分類され、このうち大きな流行の原因となるのはA型とB型です。
新型インフルエンザとは、季節性インフルエンザとは性質が大きく異なり、新たに人から人に伝染する能力を有するようになったインフルエンザウイルスによる感染症です。多くの人がそのウイルスに対する免疫を獲得していないため、全国的かつ急速にまん延し、健康や生命に重大な影響を与えるおそれがあります。
また、鳥インフルエンザは、鳥類に対して感染性を示すA型インフルエンザウイルスによる感染症です。鳥インフルエンザウイルスは通常は人に感染しませんが、感染した鳥などと濃厚に接触した場合などに、まれに人に感染することがあります。
これらのインフルエンザは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」において、その種類に応じて分類されています。特に新型インフルエンザや鳥インフルエンザについては、感染の拡大を防止するための様々な対応が進められています。
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(2026年7月現在)
| インフルエンザの種類 | 法律における分類 |
| 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9) | 二類感染症 |
| 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9以外) | 四類感染症 |
| インフルエンザ(鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ以外) | 五類感染症 |
| 新型インフルエンザ | 新型インフルエンザ等感染症 |
法律における主な分類と感染症の例(2026年7月現在)
| 分類 | 定義(主な該当感染症) |
| 一類感染症 | エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱 |
| 二類感染症 | 急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(ベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスのみ)、中東呼吸器症候群(ベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスのみ)、鳥インフルエンザ(インフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスで血清亜型がH5N1、H7N9のみ) |
| 三類感染症 | コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス |
| 四類感染症 | E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)以外)、ボツリヌス症、マラリア、野兎病 上記に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病であって、動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、上記に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの |
| 五類感染症 | インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症以外)、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎以外)、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症 上記に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病(四類感染症以外)であって、上記に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるもの |
| 新型インフルエンザ等感染症 | 新型インフルエンザ:新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの 再興型インフルエンザ:かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの |
| 新型コロナウイルス等感染症 | 新型コロナウイルス感染症:新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの 再興型コロナウイルス感染症:かつて世界的規模で流行したコロナウイルスを病原体とする感染症であってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの |
| 指定感染症 | 既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症以外)であって、この法律の第3章から第7章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの |
| 新感染症 | 人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの |
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インフルエンザの診断
それでは、インフルエンザはどのように見分けるのでしょうか?
インフルエンザは、風邪のような症状とともに、高熱(38℃以上)、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が出るのが特徴です。このような症状がある時は早めに病院を受診しましょう。
医療機関では、症状や流行状況などを踏まえて診断が行われ、必要に応じて迅速診断キットなどによる検査が行われます。迅速診断キットでは、鼻などから検体を採取し、ウイルスに感染しているかどうかを調べます。しかし、感染の初期はウイルス量が少なく、インフルエンザであるにもかかわらず検査結果が陰性になることがあるので注意が必要です。
インフルエンザの治療
インフルエンザの治療には、熱や鼻汁などの症状を抑えるための対症療法と、インフルエンザウイルスに直接作用する抗インフルエンザウイルス薬を用いた治療があります。ここでは、抗インフルエンザウイルス薬について説明します。
いろいろな抗インフルエンザウイルス薬
抗インフルエンザウイルス薬は内服薬の他に吸入薬や注射薬などもありますが、いずれも市販薬ではないため、医師に処方してもらう必要があります。
| 抗インフルエンザウイルス薬の種類 |
| ■ノイラミニダーゼ阻害薬 ・オセルタミビルリン酸塩(タミフル:内服薬) ・ザナミビル水和物(リレンザ:吸入薬) ・ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル:吸入薬) ・ペラミビル水和物(ラピアクタ:注射薬) ■キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 ・バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ:内服薬) ■M2蛋白機能阻害薬 ・アマンタジン塩酸塩(シンメトレルなど:内服薬) ■RNAポリメラーゼ阻害薬 ・ファビピラビル(アビガン:内服薬) |
カッコ()内は商品名
アマンタジンはA型インフルエンザウイルスに作用しますが、現在では多くのインフルエンザウイルスが耐性を獲得しており、インフルエンザの治療に使用される機会は少なくなっています。
ファビピラビルは、通常の季節性インフルエンザの治療に使用される薬ではありません。他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分な新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、国が使用すると判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品です。
→ 治療薬を体系的にまとめた『治療薬・同効薬分類DB』の詳細はこちら
抗インフルエンザウイルス薬の効く仕組み
ここからは、体の中に入ったウイルスに対して薬がどのように効くのか、少し詳しく説明します。
- インフルエンザウイルスが鼻やのどの粘膜に吸着して、人の細胞の中へ侵入します。
- ウイルスは、侵入後に自身の膜をやぶり細胞の中に遺伝情報(RNA)を放出します。これを「脱殻」といい、「M2蛋白機能阻害薬」はこの脱殻を阻止します。M2蛋白機能阻害薬が効果を示すのは、インフルエンザウイルスのうち「M2蛋白」という種類の蛋白構造をもつA型インフルエンザウイルスのみで、B型やC型インフルエンザには効果がありません。また、現在では耐性ウイルスが広くみられるため、インフルエンザの治療に使用される機会は少なくなっています。
- 放出されたウイルスのRNAは細胞の核内に取り込まれ、ウイルスのRNAや蛋白質を作るための反応が進みます。ウイルスRNAからmRNAを作る「転写」の過程では、キャップ依存性エンドヌクレアーゼという酵素が働きます。「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」は、この酵素の働きを阻害することでウイルスのmRNA合成を阻害し、ウイルスの増殖を抑えます。一方、ウイルスRNAを増やす「複製」の過程ではRNAポリメラーゼが働きます。「RNAポリメラーゼ阻害薬」はこの働きを阻害することで、ウイルスRNAの複製を抑えます。
- こうして作られたウイルスRNAや蛋白質から新しいインフルエンザウイルスが形成されます。新しくできたウイルスは、「ノイラミニダーゼ」という酵素の働きによって細胞の外へ出ます。これを「遊離」といい、「ノイラミニダーゼ阻害薬」はこの遊離を阻止します。

抗インフルエンザウイルス薬の効果は、インフルエンザの症状が出始めてからの時間や病状により異なります。抗インフルエンザウイルス薬を適切な時期(発症から48時間以内)に使い始めると、発熱期間は通常1~2日ほど短縮され、体の外に出るウイルスの量も減少すると言われています。しかし、発症から48時間以降に使い始めた場合は、十分な効果が期待できないことがあります。
また、抗インフルエンザウイルス薬はすべての患者に必須ではありません。使用するかどうかは症状や病状などに応じて医師が判断します。インフルエンザが疑われる場合は早めに医療機関を受診し、処方された薬の用法、用量、期間(服用する日数)を守ることが大切です。
インフルエンザの予防
最後に、インフルエンザの予防について6つのポイントを紹介します。
(1) ワクチンの接種
インフルエンザワクチンには、インフルエンザの発病を一定程度予防する効果や、発病後の重症化を予防する効果があります。体質などにより接種できない人もいるので、接種前に医療機関で相談しましょう。
(2) 正しい手洗い
手に付いたインフルエンザウイルスを取り除くためには、石けんを用いた手洗い、アルコールによる消毒が効果的です。

(3) 咳エチケット
知らないうちに周りの人へウイルスを飛ばしている場合があるので、普段から咳エチケットを守りましょう。
<咳エチケットとは?>
・咳やくしゃみを他の人に向けてしないこと
・咳やくしゃみが出る時は、ティッシュやハンカチなどで口と鼻を覆うこと
・とっさの場合は、手ではなく袖や上着の内側で口と鼻を覆うこと
・咳やくしゃみが出る時はできるだけマスクをすること
・咳やくしゃみを手のひらで受け止めた時はすぐに手を洗うこと
(4) 体調管理
体の抵抗力を高めるために、十分な栄養と休息をとるなどして体調管理につとめましょう。
(5) 適切な湿度
空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下します。特に乾燥しやすい室内では、適切な湿度(50~60%)を保つよう心がけましょう。
(6) 流行時期は人混みを避ける
流行時期に人混みを避けることでインフルエンザウイルスに触れる可能性が減り、感染の確率が低下します。
インフルエンザの治療方法は日々進化していますが、それに対抗するようにインフルエンザウイルスもまた変化します。感染を未然に防ぐためには、正しい知識を持ち、日常から予防を心がけることが大切です。
―参考資料―
厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ)
厚生労働省 鳥インフルエンザについて
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA) 医療用医薬品情報
抗インフルエンザウイルス薬の添付文書及びインタビューフォーム
ファビピラビル承認情報
一般社団法人 日本臨床検査薬協会ホームページ
